素敵じゃない日々
前に進めずにもどかしい。明日が怖くてかなしい。それでも時間は進むから、なんでもない顔で電車に乗る。
久しぶりに小説を手にしたら、ちゃんと読み進められて嬉しかった。本を読むことがどうしてもできなくて、"本を読めていない"という事実に勝手に苦しくなっていた。文字を目で追いながら、ストーリーというより書きっぷりにはまるから本を読むのだと思えた。その人ならではの目線や表現が感じられたとき、読んでよかったと思う。
小説をめくりながら、これはなんの紙だろうと考えた。今月3冊目に差し掛かり、それぞれ文字のサイズやノンブルの場所が違って、自分の読みやすい組み方を探るようになった。これは同人誌を作るようになったから身につけた視点なのだろう。
数日前、アイドルのトークイベントへ行った。
正直、今の心持ちでなにかを楽しむ余裕が無く行かずに流そうかとも思ったのだけど、行けば楽しめることもわかっていたから、のろのろと準備をして会場へ向かうことにした。
いつもの推しではないアイドルの現場だったので、オタクの層もすこし違う気がして、肩身が狭いなと思いながら開演を待った。こういうときに小説を持っているとちょうど良い。スマホばかり触っているのは、なんだかイベントへの集中力が散漫になる気がする。ほのぐらい客席で、ちらちらと映るミラーボールの反射を灯にして、ページをめくった。
いざ始まると、トークとライブはあっという間に過ぎていった。比較的客席が少ない会場で、オタクのひとりひとりと目を合わせ、レスをし、みんなを元気づけたいと言う姿はやっぱり太陽だった。大きなステージに立ち、回転の速い特典会をさばていたあの頃を思い出したら、もしかして窮屈な日々でもあったのだろうかといらない心配をしてしまう。今、彼女がのびのびとやれているのだとしたら、卒業も良いものだったのだろう。
アイドルはアイドルの数だけ愛がある。違うぬくもりに触れたから、推しのかたちを確かめた。
(素敵になりたくて憧れてる気がする、素敵じゃないから)
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